溶連菌とは?
溶連菌(ようれんきん)とは、主に溶血性連鎖球菌(以下、溶連菌)と呼ばれる細菌を指します。この細菌は喉や皮膚、肺などに感染し「溶連菌感染症」として急性咽頭炎、猩紅熱や膿痂疹、蜂窩織炎を引き起こすことがあります。
主に11月から5月にかけて感染が流行しやすく、6歳から15歳の子供によく見られる感染症です。
また溶連菌は、体の様々な部位に感染する性質を持っているため、感染する部位によって異なる症状を引き起こす特徴があります。
こんな症状はありませんか?
- 38~39℃の発熱
- 手足の赤い発疹
- 舌の赤いぶつぶつ(苺舌)
- 喉の痛みや腫れ
- 腰や膝などの大きい関節の痛み
- 皮膚が赤く腫れ、痛みがある
- かさぶたに覆われた膿疱
- 首のリンパ節を押すと痛みがある
など
このように感染する部位ごとに様々な症状がありますが、鼻水や咳はあまり現れません。
まれに重症化すると、下記の合併症を伴うことがあります。
- 中耳炎
- 気管支炎
- リンパ節炎
- 副鼻腔炎
など
溶連菌感染症は、重症化や合併症を引き起こしますが、多くは適切な内服治療などによって自然に治癒する病気です。
肝心なのは、早期の発見と治療です。溶連菌感染症を疑う症状がある方は、お早めに当院へご相談ください。
溶連菌の種類
溶連菌には様々な種類がありますが、人の感染症の原因になる溶連菌は主に4種類と言われています。
- A群β溶連菌
- B群溶連菌
- C群溶連菌
- G群溶連菌
など
B群溶連菌は経腟分娩時に母体を介して新生児へ感染し、肺炎や髄膜炎、敗血症を引き起こすことがあります。大人が感染すると、肺炎や敗血症を発症する可能性があります。
C群溶連菌とG群溶連菌は主に大人へ感染する細菌で、敗血症や劇症型溶連菌感染症を引き起こすことがあります。劇症型溶連菌感染症は溶連菌が脳内に入り込むため、急速に全身状態が悪化し死に至ることもある病気です。
溶連菌感染症の原因
溶連菌感染症は、主にA群β溶連菌へ感染することで発症します。A群β溶連菌は、上記でご説明した4種類の溶連菌の中で、症状を引き起こす頻度が高いと言われています。
溶連菌の感染経路は、主に飛沫感染と接触感染です。
感染後は2日から5日ほどの潜伏期間があるため、その間に感染者の咳やくしゃみの飛沫を吸い込む時、また子供同士や家族との触れ合い、食器の共有によってさらに感染を広げる可能性が高まります。
特に幼稚園や小学校に通う子供は、手や顔の触れ合う距離が近く、遊具や物の貸し借りをすることがあるため、感染しやすい環境にいます。
溶連菌感染症の検査
溶連菌感染症に感染しているかどうかを診断するために、主に3つの検査方法があります。
咽頭培養検査
最も多く行われている検査は、喉の菌を増やして調べる咽頭培養検査です。綿棒で喉の菌を採取し、専用の容器で菌を培養することで細菌の量が増え、顕微鏡で調べることができます。
約1週間かけて検査を行うため、溶連菌やその他の細菌の有無など正確な結果を得られる方法です。
溶連菌迅速診断キット
この検査は、咽頭培養検査と同様に喉の粘膜から菌を採取する方法で行います。使用する検査キットによりますが5分程度で検査結果を得られるため、迅速な診断が可能です。
血清抗体検査
溶連菌感染症によってリウマチ熱や急性糸球体腎炎を発症した場合に行う血液検査です。検査にかかる所要時間は30分程度です。
採取した血液内に、溶連菌が産生する毒素に対する抗体(ASO)や酵素に対する抗体(ASK)がどのくらいあるか数値を測定します。
溶連菌感染症の治療方法
溶連菌感染症の治療は、主に抗菌薬の服用と症状の緩和を中心に行います。適切な治療を受けることで、症状の改善と合併症の予防が期待できます。
抗菌薬などの服用
溶連菌感染症と診断された場合は、主に7日から10日ほどかけて抗菌薬を服用する治療を行います。
服用を始めると1週間ほどで解熱し喉の痛みなどは軽減しますが、処方された薬は最後まで飲み切りましょう。もし途中で服用を止めてしまうと重症化し、リウマチ熱や猩紅熱などを発症することがあります。
他には対症療法として、発熱、頭痛や喉の痛みに対して非ステロイド性の解熱鎮痛薬を投与することもあります。
こまめな水分補給
発熱している時は、汗をかきやすく体力を消耗します。こまめにスポーツドリンクや水、経口補水液を飲みましょう。
なるべく体温を一定に保つために常温の飲み物にし、脱水状態を軽減するために塩分やミネラルを一緒に摂れることが望ましいです。
アイスノンで体温調節
この病気にかかると細菌への抵抗力を保つために発熱し、皮膚の炎症などによって体が熱を帯びるため、体熱感(ほてりのような熱さ)を強く感じることがあります。そのような場合は、アイスノンを首や手首、脇の下に当てると、体熱感を和らげることができます。
溶連菌感染症の感染予防対策
溶連菌感染症は、繰り返し感染することがあります。自分が感染しないことはもちろん、周囲の人へ感染を広げないよう、感染予防対策をしましょう。
- ドアノブや電気スイッチなどのアルコール消毒
- 流水石鹸で手洗い、アルコールで手指消毒
- 感染者がいる環境ではマスクを装着する
- 食器などは共有しない
- 感染者は個室で療養する
- 介助者は手袋、マスク、長袖などを装着しなるべく接触を避ける
など
登園・登校の再開について
溶連菌感染症は、学校保健安全法において第3種学校伝染病に分類されており「学校医やその他の医師が感染を広げる恐れがない病状と判断できるまで出席停止」と定められています。
学校はこの指定をもとに独自のルールを定めていることがあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
当院では下記を目安に、お子様の症状や様子を見ながら登園登校の再開を検討します。
- 抗菌薬内服後24~48時間経過している
- 感染を広げるような症状が治まっている
など
もし登園や登校再開後の過ごし方について、気がかりなことがありましたらお気軽に天王寺・桃谷のじゅんあかちゃんこどもクリニックへご相談ください。